たとえば、オレンジ色を愛おしいと思ったとき(5/6)
「少しぐらい我慢できないか? 取り敢えずそこの公衆トイレへ…」
「うそ」
俺に肩を抱かれた一果が真顔でこちらを向いていた。俺は反射的に一果の頭をはたいた。
「いた」
「知るか」
明らかに痛がらない一果の言葉に反射的に言葉を返す。
「酔いは冷めただろ? 俺はもう帰るから」
「あ。置いてくのかよー」
俺が振り返って歩き出そうとすると、一果が呼び止める。
「どうせ方向同じなんだから勝手についてくるだろう?」
「まあねー。って、ちょっとまった」
「何?」
「足下。吸い殻のポイ捨てはダメでしょう」
「あ」
足元を見るといつの間に捨てたのか、確かにさっきまで吸っていた自分の煙草の吸い殻が落ちていた。
「はい。灰皿」
「おう」
俺は足下の吸い殻を拾い上げて一果が差し出してくれた携帯灰皿に吸い殻を捨てた。
「一果のは?」
「もうこの中」
そういうと、一果は携帯灰皿をかさかさと振って、ポケットにしまった。
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