たとえば、オレンジ色を愛おしいと思ったとき(4/6)
オレンジがだんだんと唇に近付いているのに気付く。
そして、
オレンジが燃え尽きた後の灰が足下に落ちる。
「一果」
「春杜」
同時に振り向きそして向かい合う。
街の喧噪、川の流れる音が急に大きくなった様な気がした。耳元でざわざわとやかましく響く。何かを、何かを遮るかのように。遮るかのように…。
一果が口を開いた。ざわめきは静寂へ。
「気持ち悪い」
「へ?」
一果が真顔でそう言うと、俺は突拍子もない声をあげる。
「あ、吐くかも」
一瞬、音が消える。そしてすぐに今までそんなに気にしていなかった街の喧噪や川の流れる音が大きく耳元に響いた。
「ば、馬鹿っ! こんな時に煙草なんて吸うからだろっ!」
「だ、だってぇえぇ…」
焦る俺、泪目一果。
片手で口を押さえる一果。更に焦る俺。
取り敢えず俺は、一果の肩を抱いて一果を立ち上がらせた。
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