1万年アイス(6/7)
「あ」
 少女の顔が急に明るくなった。

「どうしたの?」
 少女の顔を少し覗き込むようにして言った。

「あたりが出ました」
 当たり棒を見ながら、満面の笑み。

「あ、おめでとう」
 手袋をした手で『ぽんぽん』と小さく拍手をする。

「もう一本です」
 私に当たり棒を見せて言った。

「だね」
 それを見て私も笑みを浮かべた。

「食べます?」
 いたずらっぽい笑みを浮かべて。

「要らない」
 私は首を振って拒否した。

「美味しいのに」
 やっぱり残念そう。

「寒いって」
 意地でも要らない。

「わかりました、では、私はこれで」
 そう言って立ち上がる。

「ああ。風邪引くなよ」
 私は少し鼻をすすって言った。

「はい」
 そう言うと少女は少し小走りにこのベンチを後にした。

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