1万年アイス(5/7)
「甘くみていました」
 今度はアイスをくわえた。

「次からは、気を付けると良いよ」
 自分の白い息を眺めながら言った。

「もう少し甘えられると思っていたのに」
 またアイスを口から離して言った。

「残念だったね」
 コートの中から使い捨てカイロを取り出し、無意味に振ってみる。

「溶けないアイスがあればどれだけ良いことでしょうか。いつまでも甘えていられるから。でも、溶けないアイスは無いんですね」

「無いね、残念ながら。私もそろそろ我慢の限界。あいつが来る頃には溶けてしまいそう。あいつ、甘えすぎだよ」
 少し、きつい口調で言った。

「人も、同じですか?」
 少し、弱々しい口調だ。

「あぁ、…たぶん……かな…」
 さっきはきつく言った割に、少し口調が弱くなった。

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