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つきうさぎ(4/4)
 そして次の瞬間、ヒトミはコウタの手を振りほどくように背伸びをした。ヒトミの唇が、コウタの唇に届いた。

 炎は、青白い月を横切った。

 それをコウタは冷静に受け止め、そしてゆっくりと、瞳を閉じた。

 風が”さあっ”と流れてきた。

 風はヒトミのまぶたの裏から流れ出ようとしていた泪を優しく受け止め、長い髪を揺らした。足下の小さな草花も、つられて踊る。

 コウタがヒトミの髪を優しく撫でると、ヒトミはゆっくりと唇を離して、泪目でコウタの瞳を見つめた。

「大丈夫。途中で燃え尽きてくれたみたい」

 コウタが笑顔で言ったそんな言葉を聞いて、ヒトミはその場にへたり込んだ。

「おいおい。大丈夫かよ」

 そう言ってコウタはヒトミに手を伸ばす。

「私ね…」
「何?」
「正直さっきの瞬間、”死んでも良い”って思っちゃった」
「馬鹿なこと言うなよ」
「…だって……!」

 今にも、泪が溢れんばかりの泪声。それを、”優しく”、コウタが遮った。

「行くんだろ? 月に。卒業旅行が楽しみだ」
「…うん」

 風に乗って、学校のチャイムが聞こえてきた。一気に、どこか遠いところから、普段いるところに引き戻された感覚。

「さて、戻るか」
「うん」

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