暑中お見舞い申し上げます(6/6)
「な、なにすんだよ、真実…」
加南子がそう言うと、
「暑いねぇ。アイス買いに行くよっ」
私は手を離して、少し大きな声で言った。
「え…?」
加南子は少し驚いたような表情。
「私について来たら好きなのおごったげる」
「え、いいのっ?」
加南子の表情がぱっと明るくなる。この日差しに負けないくらいに。
「良いよ。暑中お見舞いってことで」
「よっしゃあ! 行くぜ!」
さっきまであんなに暑さに弱さを見せていた加南子が、急に元気になって私の前を駈けていった。
「え、あ、待ってよぉ」
急に駈け出すものだから、少し戸惑った。
「ほぉら、早くぅー! 強い日差しはお肌の大敵ー!」
振り向いて加南子が言う。
そう言えば夏はそんな季節。そこんとこちょっと嫌。
でも、そんな夏だけど、暑い暑い夏だけど、暑い暑い夏が私たちに元気をくれる、ふしぎな季節。
雲の白と空の青。元気に響くセミの声。
木陰の涼に、輝く木もれ日。
冷たいアイスと加南子の笑顔。
私も負けじと後を追う。相変わらず日差しは暑くてまぶしい。
けど、心の中はとても涼やかな気分で、さわやかな潤いを感じていた。
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