暑中お見舞い申し上げます(1/6)
 山の稜線の向こう側に、大きな大きな白い入道雲がふくらんで、青い青い空の色とのコントラストがとてもきれいだった。
 そんな白と青におおわれた空には、暑くてまぶしい日差しを降らせる太陽。私たちが背にしてくつろいでいる木の下からは、木もれ日としてきらきら輝いて見えた。
 木もれ日を自分の手をかざして見あげる私の隣では、友人の加南子が静かな寝息を立てていた。
 今日はとても暑い日だけれども、河川敷のこの木の下では、おおい茂った緑の葉が暑くてまぶしい日差しをやわらげてくれるし、川からは涼しい風が運ばれてくる。ここは街の真ん中だけれども、そんなことを感じさせないくらい、まるで砂漠のオアシスみたいな場所。そんな場所を、私も加南子も大好きだった。

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