息の根っこ(6/6)
「あぁ、おやすみ…」
俺は、ゆっくりと目を閉じた。
「それじゃあね」
「………」
下らない夢だな。まぁ、でも、俺が杏子を無意識のうちに傷つけてるって事も、
「寝た?」
「………」
あり得る話だよなぁ。
「あは。それじゃ」
「………」
…杏子に、もう少し気を遣ってやっても悪いことはないな。
「良い夢を♪」
とても冷たい銃口が、眉間から鼻、唇、顎のラインを軽快に滑り、とても冷たい銃口が、のどぼとけのあたりで『ぴたっ』と止まる。
「ここ、息の根っこだからね」
杏子がそう言う。そんな声が聞こえて、俺は夢から醒めた。
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