息の根っこ(1/6)
 あー…、な、なんかあ…、お、重いしい…、く、苦しいい…?
 目が醒める。
 苦しいはずだ。

「……何だよ」
 喉から絞り出すような声で。俺は言う。

「あ、起きた」
 仰向けに眠る俺の胸の上に馬乗りになり、すこし驚いた表情で俺の首にかけていた両手を緩める。

 誰だお前は。というか何だお前は。あぁ、杏子か。

「おはよ」
 陽気に俺に微笑みかける杏子…俺の恋人の筈なんだが。

「”おはよ”じゃない」
 杏子の眼をみて真面目に答える。

「おはよ、優希」

「”おはよ、優希”じゃない」

「おはよ、ゆっきぃ♪」
 頬笑んで。

「少しばかり陽気に言ってもダメだ」

「んー…、こんばんは?」
 首を傾げてとぼけてみせる。

「……お前…今のこの状況に疑問は無いか?」

「優希が急に眼を醒ましてびっくり」

「……そうか…」

「敢えて言うなら私が優希の首を私の両手で絞めようとしていた、というか絞めていたと言うことでしょうか」

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